ミッドサマーのアリ・アスターが初めて製作した長編映画『ヘレディタリー/継承』の解説、感想、口コミをまとめました。
一言感想
【映画記録】ヘレディタリー 継承
家長の死後、遺された家族が想像を超えた恐怖に襲われるホラー。いや…怖すぎだろ……ヤバすぎて笑いが出てきました。近年稀に見るハイレベルなホラー映画。トニ・コレットの狂気に満ちた姿はどんな化け物よりも恐ろしい。完全に見てはいけないものを見てしまった。 pic.twitter.com/OUVSPkwHg5
— いもり👽映画ブロガー (@imo_lee0506) June 16, 2020
久々にとんでもない映画を見てしまいました。誰だよこんなヤバい映画作ったの…とおもったら、ミッドサマーの監督ですって。変態(=天才)ですか…
昨晩ツイートもしましたが、あまりにも衝撃がデカ過ぎてレビュー記事アップせずにはいられず。作品に対する個人的な感想と共に、ストーリーについても深堀していきます。ネタバレを多く含む内容になりますので、ネタバレNGの方は鑑賞後に是非。こちらの作品はAmazonプライムで配信中です。
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あらすじ
ある日、グラハム家の家長エレンがこの世を去る。娘のアニーは、母に複雑な感情を抱きつつも、残された家族と一緒に葬儀を行う。エレンが亡くなった悲しみを乗り越えようとするグラハム家では、不思議な光が部屋を走ったり、暗闇に誰かの気配がしたりするなど不可解な現象が起こる。
引用:https://movies.yahoo.co.jp/movie/365276/story/
概要
◆原題:Hereditary
◆制作年度:2018年
◆ジャンル:ホラー
◆上映時間:127分
冒頭でも述べましたが、本作の監督を務めたのは、あの話題の映画『ミッドサマー』の監督であるアリ・アスターです。
出典:https://www.imdb.com/title/tt7784604/?ref_=ttmi_tt
1986年生まれの33歳(※2020年6月時点)という比較的お若い監督ですが、彼が初めて製作した長編映画『ヘレディタリー/継承』、そして2作目の『ミッドサマー』と、両作品ともに成功を収めている今最も注目すべき若手映画監督です。
監督・キャスト
<監督>
◆アリ・アスター
<キャスト>
◆トニ・コレット
◆ガブリエル・バーン
◆アレックス・ウルフ
◆ミリ―・シャピロ
◆アン・ダウド
ストーリー解説(※ネタばれ注意)
出典:https://www.imdb.com/title/tt7784604/?ref_=ttmi_tt
グラハム家(母:アニー、夫:スティーブン、息子:ピーター、娘:チャーリー)の長家であり、アニーの母だったエレンが亡くなり、一家で葬儀に参列するところからこの物語は始まります。
亡くなったエレンが遺した見えない”何か”によって、死よりも残酷なまでに操られていくグラハム家の行く末を描いているのが『ヘレディタリー/継承』です。
ここからは、順を追ってこの物語の本質に迫り、隠された謎や意味について解説をしていきます。
物語の元凶
この物語の元凶は、亡くなったグラハム家の長家エレンです。
出典:https://www.imdb.com/title/tt7784604/?ref_=ttmi_tt
エレンはペイモンという悪魔を崇拝するカルト集団のトップだったんですね。
彼女が死んだ今、後継者を残さなければいけない。そうして、残された家族に悪夢のような出来事が降りかかってしまいます。
ペイモンの狙いは男(=ピーター)だった
ペイモンが求めるのは「男」でした。
その裏付けとして、首吊り自殺をしたエレンの息子チャールズは「母さんは僕の中に何かを招き入れようとした」という遺書を残していることから、一度自分の息子で試したことがわかります。
失敗に終わった結果、次なるターゲットとして、娘アニーの息子であるピーターに狙いが定まったというわけです。
出典:https://www.imdb.com/title/tt7784604/?ref_=ttmi_tt
チャーリーの死が意味するものとは
出典:https://www.imdb.com/title/tt7784604/?ref_=ttmi_tt
エレンが一番可愛がっていたはずのチャーリーは、何故あのような悲惨な死を迎えてしまったのか?
それは、彼女が男じゃなかったから、ペイモンにとって用済みの存在だったからです。
その為、チャーリーの死は偶然ではありません。呪いによる必然的な死だったのです。
実は、チャーリーが生まれた時から彼女の中にはペイモンが宿っていました。
その裏付けとして、エレンは幾度となくチャーリーに「男の子になってほしい」と告げています。結果的に男の子になれなかったチャーリーは用済みとなり、消されてしまったわけです。
最初から本命であるピーターに宿らなかった(宿れなかった)理由とは?
それは家族を操ろうとするエレンに対し不信感を募ったアニーが、エレンから息子を遠ざけるために「不干渉ルール」なるものを決めたからです。
その為エレンはピーターに長年手出しできずにいました。その代わりとして犠牲になったのがチャーリーであり、ピーターに宿るチャンスが来るまでの仮の身体だったことが考察できます。
カルト教団の一員だったジョーンにまんまと操られたアニー
エレンの死を境に通い始めたグループカウンセリングで、アニーはジョーンという一人の女性と出会います。
アニーを気遣う心優しい無害な人物だと思っていた矢先、実は彼女もカルト教団の一員だったことが後に判明します。
出典:https://www.imdb.com/title/tt7784604/?ref_=ttmi_tt
ジョーンに習った交霊の儀式は罠でしかなく、思惑に引っかかったアニーは、チャーリーの身体から解き放たれたペイモンをまんまと召喚してしまいます。
スティーブンが狙われなかった意図と悲惨な死の謎
出典:https://www.imdb.com/title/tt7784604/?ref_=ttmi_tt
ペイモンが求めるのは「男」なのに、なぜスティーブンは狙われなかったのか?
それは、あくまでペイモンが求めたのは「血縁関係にある男」だったから。
エレンにとってスティーブンは娘の夫であり、一切血の繋がりがないので狙われなかったということです。
それなのに、悲惨な死を迎えてしまったのはなぜか?
アニーがチャーリーの残した手帳を暖炉に投げ捨てた途端、スティーブンの身体に炎が燃え上がり焼け死んでしまいます。
劇中で、ジョーンから習った交霊の儀式をアニーが行おうとした際に、スティーブンだけが正気を保っており、彼によって儀式は中断されるシーンがあります。
そのような行為から、ペイモンにとってスティーブンは邪魔な存在として認識され、結果的に消されてしまったのではないかと考察できます。
物語の結末
最終的に家族全員死にます。
後継者となるピーターは、肉体は残るものの本人の魂は滅亡し、代わりにペイモンの魂が彼の身体に宿ります。
出典:https://www.imdb.com/title/tt7784604/?ref_=ttmi_tt
ペイモンの魂が宿ったピーターは、惹きつけられるようにツリーハウスに登ります。そこには首のないエレンとアニー、そしてジョーンを始めとするペイモン崇拝者たちがひれ伏せており、悪魔ペイモンの復活を祝うところで物語は終わります。
劇中に蔓延るペイモンのシンボルマーク
実は、この物語の根源がペイモンであることが分かる、ペイモンのシンボルマークなるものが劇中のところどころに隠されています。
▼冒頭の葬儀シーンで一瞬映るエレンのネックレス。
出典:https://www.imdb.com/title/tt7784604/?ref_=ttmi_tt
▼チャーリーの死因となった道路沿いの電柱。
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ヒントが冒頭から既に隠されていたわけです。
ミニチュア=悪魔に操られるグラハム家
物語の冒頭から映るミニチュアは、ジオラマ・アーティストであるアニーによって制作されたものです。
これらが意味するのは、グラハム家がカルト教団に操られるメタファーであると解釈できます。
また、ミニチュアはアニー自身の精神状態も表現していると言えます。チャーリーの死に苦しんだ挙句、事故現場を再現した作品を作ってしまったことからもわかるように、彼女の精神状態と比例して作品も徐々に病んでいきます。
出典:https://www.imdb.com/title/tt7784604/?ref_=ttmi_tt
劇中で死を遂げた女性陣に首がない理由
チャーリー▶車から身を乗り出し、電柱に衝突して首が吹っ飛ぶ
エレン▶何者かによって掘り起こされ、首を切断される
アニー▶自らの手によって首を切り落とす
以上のように、グラハム家の女性陣は、死に際/死後に全員首がありません。
その理由とは何か?
思うに、血のつながった女性の頭をペイモンに捧げることがルールだった、と考察できます。
出典:https://www.imdb.com/title/tt7784604/?ref_=ttmi_tt
感想(※ネタばれ注意)
怪演が光る、個性に溢れたキャスト陣
狂気に満ちたアニー/トニ・コレット
人間ドラマやコメディでよく見かけるイメージのトニ・コレット。
本作ではマジでイカれた怪演を見せつけられました。最初は普通のお母さんだったのに、呪いによって徐々に狂気を帯びてくる表情や姿が身震いするほどに恐ろしかったです。
出典:https://www.imdb.com/title/tt7784604/?ref_=ttmi_tt
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どんな化け物よりも怖い。夢に出てきますよ、この顔
子供?老婆?不気味な雰囲気が漂うチャーリー/ミリー・シャピロ
最も存在感を放っていたといっても過言ではないほど、一度見たら忘れられないヴィジュアルの持ち主、ミリー・シャピロ。劇中で「コッ」と舌を鳴らす彼女の癖も相当不気味で、しばらく耳にこびりついていました。
出典:https://www.imdb.com/title/tt7784604/?ref_=ttmi_tt
本作では13歳という設定でしたが、実際は2002年生まれの17歳(※2020年6月時点)らしいです。
幼い子供にも見えるし、かと思えば老婆にも見える…なんか『エスター』を思い出した。
わりと早い段階で物語から離脱してしまいましたが、まだまだ若いのでこれから色んな作品で見れることを期待したいですね。
踏んだり蹴ったりなピーター/アレックス・ウルフ
後継者としての使命を託されたピーター扮するアレックス・ウルフも、なかなかの怪演でした。
特に自動車事故の瞬間に見せた、あの表情が強烈過ぎて忘れられません。
出典:https://www.imdb.com/title/tt7784604/?ref_=ttmi_tt
人間って、初めて人を殺したとき、きっとこんな表情するんだろうな…とリアルに感じるほどに、絶望に満ちていました。
「出来る事なら夢であってほしい」という現実逃避からか、事故後まっすぐ帰宅して首のない遺体を車内に放置して寝てしまいます。翌朝遺体を見つけた母の絶叫を聞いて、「あぁ、現実なんだ」と悟るんですね。その時見せた表情もまたリアルで、胸が締め付けられる思いでした。
そもそも自分自身そんな経験ないので、リアルかどうかも本当は分かり得ないのですが、何故か不思議とリアルに感じてしまった。若干22歳にしてこの演技力はエグい…と、素人目にも感じました。
個人的トラウマ級ベストシーンまとめ
出典:https://www.imdb.com/title/tt7784604/?ref_=ttmi_tt
チャーリーの事故の瞬間
アニーが首のないチャーリーの遺体を発見した瞬間の”声”
授業中のピーターに突如呪いがかかり、見えない何かに操られ机に顔面を打ち付けるシーン
憑依されたアニーが壁を這い、天井に四つん這いになりながら頭を高速で打ち付けるシーン
天井に浮かんだアニーが、自らの手で自分の首をギコギコ切り落とすシーン
こう文字に起こすと、とんでもないですね(笑)
どれもこれも衝撃映像過ぎて、トラウマになること間違いないです。
是非、本編でお楽しみください。
総合評価
文句なしの5点満点。
『ヤバすぎて笑いが出る』
そんなホラー映画、めったに出会えません。
もはや、恐怖を超えて感動に変わっています。
もう、アリ・アスター監督のファンです。とはいいつつも、実はまだ『ミッドサマー』見れてないのですが。とはいえU-NEXTでの配信も始まったので、さっさと見ます。楽しみ。
しかし、本作を見終わった後最も感じたのは、この物語の一番の被害者はお父さん(スティーブン)だったということ。
出典:https://www.imdb.com/title/tt7784604/?ref_=ttmi_tt
とんだ被害者ですよ。アニーと結婚してしまったが故、この悪夢に巻き込まれてしまったスティーブン…不憫でなりません。
口コミ
ヘレディタリー/継承のTwitter上での口コミです。
ヘレディタリー4dx見た。首が吹き飛ぶ時水飛沫が顔にかかるわ、首を切るたびに水が滴ってくるわで、もう半笑いしか出てこなくて大変満足だった。 pic.twitter.com/jtwfcyHSWa
— 社畜のやまだ❄️ (@usOArImhIOG4qoH) June 14, 2020
ヘレディタリー観てきた!観てよかった!やはりアリ・アスターは《不快感》を喚び起こす天才。これが長編デビュー作とは驚き。ホラー映画好きな人ほど観てほしい。(あかんこれ絶対こうなるやん!あ〝〜〜〜……)と(これそういう展開やろ?……ちゃうやんけ!)が両方楽しめる☺️俳優陣の演技が💮 pic.twitter.com/IYO4xexJ1U
— ぐみぐみ (@GmgMnn) June 14, 2020
映画「ヘレディタリー/継承」観賞。
かなり観応えのあるオカルトホラー。
家族崩壊の描写もまた秀逸で、
登場人物が丁寧に描かれているところも良き。1番怖かったのは、ピーターと妹の車のシーンからのあの母親の悲鳴…
ピーター、母親、どちらに感情移入して観ても背筋が凍るシーンでした。 pic.twitter.com/6j6RFYV9PB— ドン・コルレオーネ (@godfatherpart7) June 12, 2020
ヘレディタリー/継承
見る人によってはトラウマになりそうなレベルで怖かった。ビックリ系の演出がほぼ無いのにこの怖さ、とにかく”見せ方”が天才のそれ。散りばめられた伏線をラストには全て回収してるのもこれもまた凄い。グロシーンが若干あるので閲覧注意、そもそも怖すぎるので閲覧注意。 pic.twitter.com/qmajxX9nuD— ほおずきてゃ (@This__is__GOMI) June 14, 2020
おわりに
興奮しすぎて長くなってしまいました。
この感動を共有した過ぎて、ネタバレ満載で長々と綴ってしまいました。
文句の付けようがない良作ホラーですが、かなり精神えぐれる映画なので要注意。